管理職は残業代不要?! 

 介護事業をしています。当施設では、管理職は全員残業代を支払っていません。知人から、問題があるのではと指摘を受けましたが問題ないでしょうか?
管理職と管理監督者に違いがあることはご存知でしょうか?

「当施設の管理職といえば、主任以上。管理監督者も同じではないのか・・・。」とイメージされた場合、もしかしたら御社では人件費に大きなリスクを抱えているかもしれません。そのため、労働基準法のルールに則って問題がないか確認する必要があります。

 

なぜならば、労働基準法に定めている管理監督者に該当すれば、「労働時間等の規定の適用が除外される=残業代不要」となります。しかし、施設内で管理職と呼ばれる役職であっても、労働基準監督署や裁判所などにより管理監督者に不該当と判断された場合、残業代を支払わなければなりません。しかも、過去に遡って請求されることも少なくありません(いわゆる名ばかり管理職問題)。

 

ここで一つの事例を見てみましょう。

事例:

   管理監督者と考え、残業代を払っていなかった。給与額、残業時間は次の通り。
   ・1時間当たり1,500円の給与

   ・1ヶ月当たり、100時間の残業(時間外労働)を行っていた

       管理監督者として認められなかった場合に必要な残業代は次の通り。

   (中小企業) (注1)

   1,500×1.25×100時間=187,500円   

   残業代として、1ヶ月あたり187,500円が必要


   (大企業)

   (1,500×1.25×60時間)+(1,500×1.5×40時間)=202,500

   残業代として、1ヶ月あたり202,500円が必要

 

この事例では、月額にして約20万円もの人件費が追加的に必要されています。仮に過去2年間について請求された場合480万円(20万円×24ヶ月)となってしまいます。(注2)


このように、想定外の人件費を突然負担しなければならなくなれば、資金繰りに影響しますし、法令に違反していたという情報が漏れれば社員の信頼を失うことにもなり、経営に大きなダメージとなります。こうしたリスクを負わないようにするためには、管理監督者の範囲を拡大解釈するのではなく、きちんと見極める必要があります。そして、その範囲から外れた社員については、通常通り残業代を支給する必要があります。

 

では、労働基準法の管理監督者はどのような人のことをいうのでしょう。
行政通達のポイントから考えると、次の3つの要件を満たす必要があると考えられます。

 

重要な職務と権限・責任が与えられ、経営者と一体的な立場にあること

労務時間に関して自己の裁量があること

職務の重要性にふさわしい処遇(相応の給与及び賞与)を受けていること

 

自社の管理職が、上記の要件にあてはまっているか確認し、必要に応じて労働条件を見直してみることをお勧めします。

 

 

(注1)中小企業に該当するか否かは、業種別に「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」で判断されます。医療、福祉は、日本産業分類によりサービス業にあたります。サービス業は資本金5,000万円以下または100人以下で中小企業と判断されます。
  

(注2)事例では、中小企業の割増賃金率が1.25倍となっていますが、大企業の割増賃金率は1カ月60時間を超える残業に対しては1.5倍になっています。これは、平成22年に大企業については割増賃金率が改正されたためですが、中小企業についても法改正施行から3年経過後(平成25年)に改めて検討することとされています。実現されると、中小企業も大企業と同水準の負担が求められることになります。

         詳しい内容や見直しをご検討の場合はお気軽に当事務所までお問い合わせ下さい。

 

 

 

浜松介護福祉経営サポートセンター お問い合わせはこちら

訪問介護ヘルパーの労務管理 労働トラブルを防ぐ9つのポイント! 

__sozai__/0000292.jpg特殊なヘルパーの労務管理

 訪問介護の事業では、訪問介護員、ホームヘルパー、ヘルパーなどと呼ばれる人が多数活躍しています。しかし、家庭を訪問した上でサービスを提供するため管理が難しい面があったり、契約形態が利用者のサービス利用状況に応じて不規則にシフトで勤務する場合が多かったりするなど、一般の事業所で勤務する場合と異なる勤務の実態があって、賃金や労働時間などに関する労働トラブルが発生しがちです。

 そこで、労働トラブルを防ぐ9つのポイントを以下に、ご紹介いたします。

Point1 労働条件の明示 

採用の際に、きちんと労働条件を理解して、納得した上で働いてもらうことはトラブルを防ぐ上で非常に重要で
す。そのため、労働基準法でも次の通り労働条件の明示を義務付けています。

(労働条件の明示)
第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

特に気を付けるべき点として.gif

 __sozai__/0014150.jpg 労働契約期間の明示
 労働契約に期間の定めが有るのか、無いのかを明示しなければなりません。
1年や1ヶ月など期間を区切った労働契約(有期労働契約)を結ぶ場合は、契約期間を「有…平成○年○月○日
から平成○年○月○日まで」などと明示ししておきます。
なお、詳しくは、「有期労働契約の締結更新及び雇止めに関する基準」に則って労働契約書などで明示します。

__sozai__/0014151.jpg 就業の場所、従事すべき業務、労働日、始業・終業の時刻、休憩時間
勤務時間が一定期間ごとに作成される勤務表によって特定される不規則な勤務の短時間労働者(非定型的パ
ートタイムヘルパー)について、明示すべき事項が膨大になる場合は、Aについての考えを示した上で、就業規
則の関係条項名、労働契約締結時点での勤務表を書面を交付することにより明示します。

 

Point2 労働時間の把握

訪問介護の業務に直接従事している時間だけでなく、移動時間、業務報告書の作成時間、待機時間、研修時間についても労働時間に該当する場合があり、使用者は適正に把握する必要があります。

 

Point3 休業手当

訪問介護事業では、利用者からのキャンセルや日程変更を理由としてヘルパーを突然休ませざるを得ないことがありえます。そのようなとき、欠勤扱いとして賃金を支払わないという対応をとっていることもあるかもしれませ
ん。しかし、このようなケースでは改善が必要とされます。なぜなら、労働者は決められた労働時間に働くつもり
で用意をしているにもかかわらず、休業させることになれば、施設側の都合による休業だと労働基準法では考えます。その場合、休業手当の支払が必要になります。

(休業手当)
第二十六条  使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

Point4 賃金の改定 

これは、ポイント2の労働時間の把握と密接な関係が有ります。ポイント2に則って今まで労働時間に算入してい
なかった時間を、新たに労働時間に算入することになったのであれば、当然その部分に対する賃金を支払わな
ければならなくなります。また、支払う賃金は最低賃金を下回らないようにしなければなりません。

 

Point5  年次有給休暇

短期間の労働契約を繰り返しているヘルパーの場合、有給休暇を付与していないケースもあるのではないでし
ょうか。しかし、そのような場合でも、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上を出勤
した場合は年次有給休暇を付与しなければなりません。なお、労働日数が少ない場合は、その所定労働日数に
応じて、付与する年次有給休暇の日数が変わります(比例付与)。

Point6 就業規則

常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則を作成しなければなりません。短時間勤務のヘルパーでも
「常時10人の以上の労働者」に含まれるため注意が必要です。また、作成された就業規則は、必ず労働者に
周知しなければなりません。周知されなければ、いざというとき効力が認められない恐れがあるのです。

(作成及び届出の義務)
第八十九条  常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

〈労働契約法〉
第七条  労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。

Point7 労働者名簿、賃金台帳

短期間や短時間のヘルパーでも、労働者名簿及び賃金台帳の作成、保存が必要です。

(賃金台帳)
第百八条  使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

(記録の保存)
第百九条  使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。

Point8 安全衛生

短期間や短時間のヘルパーでも、雇入れ時などには安全衛生教育が必要です。

Point9 労働保険

短期間や短時間のヘルパーでも、1人でも雇っている場合は労働保険(労災保険・雇用保険の総称)の加入が
必要です。労災保険と雇用保険では、加入すべき範囲が異なりますので注意が必要です。

 

まとめ

ここまで、見ていただいてお気付きかも知れませんが、特殊な働き方をしているヘルパーだからといって、特別に労働基準法な
どのルールの対象から除外されているわけではありません。法律では、特別扱いをしていなので他の労働者と同様に労働基
準法などが適用されると考えておくといいでしょう。

(参考)
これらの事項は厚生労働省から、「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について(平成16年8月27日付 基発第0827001号)」という通達で指摘しています。

 

訪問労働ヘルパーの労務管理についてのご質問等はお気軽にお問い合わせ下さい。

浜松介護福祉経営サポートセンター お問い合わせはこちら